The cat loves the dog.
―――またしてしまったか…
自らの愛液の絡まった指を見つめる。
快楽が欲しいわけではないと思う。そんなものは一時のものでしかないし、終わった後にはそれ以上の惨めさが襲ってくる。
そうと分かっていてもその行為に走ってしまうのは、自分の中にある人間の部分のせいだろうか。
指を拭き、熱った身体を横にする。
「…ちっ」
どうにも眠れそうにない。
ここに戻ったのは失敗だったか。
その日は組織の本部に帰っていた。
普段はあまり寄り付かないようにしているが、なんとなく身体が向かってしまったのだ。
気分を変えようと外に出たはいいが、いつの間にか人気のない岩場に来ていた。
これも悲しい性だ。
そこに座り込み、夜風に吹かれる。
そこから砂漠の様な地形が一見できた。
しばらく辺りをぼんやり眺めていたが、所詮何もない所なので流石に飽きてきた。
その時、一つの妖気が近付いて来るのを感じた。
「…ジーンか?」
呼びかけると、ジーンが背後の岩の陰から姿を現した。
「お前が戻っていると聞いたんでな。邪魔したか?」
「いや…ちょうど退屈していたところだ」
急に風が強くなってきた。
髪が風に煽られ嫌でも色素の抜けたそれが視界に入る。
―――元は何色だったかな
思い出せず、心の中で自懲気味に笑う。
ジーンは私の斜め後ろに立った。
なんとなく髪に目がいってしまう。
「どうした?」
ジーンが視線に気付く。
「お前は…人だった頃、髪は何色だったんだ?」
くだらない事を聞いている、とは思ったが少し興味がある。
「ガラテアはどうだったんだ?」
「…そんなのとっくに忘れたさ」
逆に問われ、苦笑いをしてみせる。
「私も忘れた」
ジーンは相変わらずの真顔で言った。
ジーンとは以前に何回か覚醒者狩りで一緒になった事がある。
見た目とは裏腹に義理人情の厚い奴だった。
我々の中でも珍しい部類に入るだろう。
その上何かと言っては私に会いに来る。
本当に珍しい奴だ。
しかし既に友人のいなくなった私にとってそれは、少し嬉しい反面複雑な気持ちにさせる。
正直心が通じ合った相手が死んでしまう事が怖い。頭に焼き付けられた昔の苦い経験が私を今だに支配している。
それでも成り行きで親しくなったりするが、結局はそいつは死んで私は取り残される。
その繰り返しだ。
そういえば半人半妖になるずっと前に、何万回死んでも生き返る猫の物語を聞いた。
―――私はまるで、その猫の様だな
私の中の時間は止まっているのに、周りの世界は構わず進んでいく。
―――猫か…
肩越しにジーンを見る。
―――こいつはあれだな…
「…犬」
―――しまった!つい声に
「い…ぬ?」
ジーンは怪訝そうな顔をした。
「あ…いや…そう言えばお前少し痩せたんじゃないか?犬は美味いらしいぞ。今度食ってみるといい。勿論野生のやつをな」
―――何を言っているんだ私は…
「そうなのか?…それよりガラテア、お前が組織に戻っているなんて珍しいな。何かあったのか?」
「さあな…。ただの気まぐれか…或いは人恋しくなったのか」
冗談めいて言う。
「…人恋しい、か。馬鹿馬鹿しい。寂しいとかそういうのは人間が感じるものだからな。我々にそんな感情があるはずないさ…」
何故か言葉が止まらない。
最近まともな会話をしていないせいだろうか。
そんな私の言葉を、ジーンは黙って聞いていた。
「まぁ…あれだな。我々には関係のない話という事だ…」
言葉を発すれば発する程、墓穴を掘っているようで締まりがつかなくなった。
突然後ろから抱き締められ、ジーンの温かみのある匂いが鼻を擽る。
「ジーン?!」
「……」
「…何の真似だ?」
「私がこうしていたいんだ…いいだろ?」
語気を強め、有無を言わせない。
背中から伝わってくるジーンの温もりが心地好い。
久しく味わっていない感触だった。
「ジーン」
振り返り、隙のできたジーンの唇を奪う。
突然の事で驚いた顔をしていたものの嫌ではなかったようで、今度はどちらともなく口付けを交す。
初めはそれ以上するつもりはなかったが、次第に身体の芯が熱くなり気持ちに歯止めが効かなくなった。
ジーンをゆっくりと後ろへ押し倒す。
「…ガラテア?」
まだ事態を飲み込めていないようで、不思議そうな顔で見てくる。
「すまん、ジーン…」
目を伏せ、ジーンの服を取り払う。
「っ!?」
これは流石のジーンでも分かったらしい。
だが、少し慌てた素振りを見せただけで、抵抗はしなかった。
「い…やじゃないのか?」
てっきり嫌がると思っていたため、声が上擦ってしまった。
「ああ…」
静かに言い、腕を肩に回してきた。
その温かさを確かめるように全身を愛撫していく。
胸の先端を舐められ出す声も、触れなれない箇所に触れられ退け反る身体も、ジーンの動作すべてが私を満たしていく。
ジーンの秘所に触れるとじんわりと温かい液体を感じた。
自分のそこも相当熱くなっている。
服を脱ぎ、ジーンのそこに自分のものを当てがう。
そしてゆっくりと腰を動かし始めると、繋がったそこが卑猥な水音をあげた。
ぽたりと雫が落ちて初めて気付いた。
私は泣いていた。
気持ちの良い行為なはずなのに、何故?
答えは見付からない。
「ガラテア…」
ジーンは肩で息をしながら私の顔に手を伸ばし、涙をすくいとった。
言葉なんていらなかった。
ジーンは私を好いてくれている。
それだけで十分だ。
「すまん。任務でな」
「覚醒者か?」
「あぁ…西の方だ」
「また…いや、何でもない」
言いかけてやめる。
彼女の任務が終わる頃、ここに寄ろう。運がよければ会えるかもしれない。
「それよりお前、相変わらず嘘が下手だな…。練習しとけ」
『私も忘れた』
『私がこうしていたいんだ』
どれもわざとらしすぎる。
振り返ったジーンの口元が微かに歪んだ。
―――笑うのも下手なんだよ…
まぁ、それもジーンらしくていい。
ジーンの去っていった方を見つめる。
もっと広く、もっと遠くまで…集中しジーンの妖気を感じる。
だがそれも次第に薄れていった。
あとがき
秘蔵の書w 某所に投下したものです.
この話どこかで読んだことある、という方もいるでしょう^^;
はい、実は本家の「A lonely cat and a tender dog」の元になったものなのです; 元はエロエロだったんですね~.
本家の方のイメージが壊れたとかいう苦情は受け付けません!!w